脳卒中・心筋梗塞・透析・慢性心不全を予防するための、かかりつけ医としての診療
私が最も大切にしていることは、患者さんが脳卒中や心筋梗塞で倒れないことです。さらにその先を見据え、透析導入や生活の質(QOL)を大きく低下させる慢性心不全を予防することを念頭に置いて診療を行っています。そのためには、脳や心臓の病気を引き起こす危険因子を総合的に管理することが重要です。
1. 高血圧
現在は優れた降圧薬が数多くあります。しかし、薬は種類によって作用時間(半減期)や特徴が異なります。患者さん一人ひとりの生活スタイルや病状に合わせ、それぞれの薬剤の特性を生かした治療を行うことが大切です。
2. 糖尿病
糖尿病の管理では、薬だけに頼るのではなく、まず食事療法が基本です。特に適正な炭水化物摂取量を理解していただくことを重視しています。そのうえで必要な場合には、患者さんの状態に応じた薬物療法を行います。
3. 脂質異常症(LDLコレステロール・中性脂肪)
LDLコレステロールは、スタチン製剤を中心とした薬物療法が非常に有効です。必要に応じてPCSK9阻害薬などの新しい治療も選択します。一方、中性脂肪は食生活の影響を強く受けます。特にアルコール摂取量や炭水化物の摂取量との関係が大きいため、生活習慣の改善が重要になります。
4. 心房細動
心房細動は脳梗塞の重要な原因ですが、自覚症状がないまま進行していることも少なくありません。そのため、血圧を測定する際には、ご自身でも1分程度脈を確認する習慣をお勧めしています。心房細動は早期に発見できれば、薬物治療やカテーテルアブレーションによって改善が期待できます。しかし、長期間放置された場合は、アブレーションの成功率が低下することがあります。
その他の危険因子
次のような因子も動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めます。
- 喫煙
- 過度の飲酒(アルコール50g/日以上)
- 加齢
- 家族歴
これらも含めて総合的に評価し、予防に取り組むことが重要です。
病気は「一つだけ」ではありません
危険因子が一つでもある場合、自覚症状がなくても脳卒中や心筋梗塞のリスクは存在すると考えます。さらに、危険因子が複数重なるほどリスクは高くなるため、それぞれを適切に管理していく必要があります。病気は一つだけを診るものではありません。高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈などを総合的に診ることで、初めて本当の予防医療が実現できます。大規模病院では専門分化が進み、一つの疾患を専門的に診療することが多くあります。一方で、複数の疾患や危険因子を横断的に管理することは、総合内科医が果たす重要な役割です。私は、患者さんが健康で長く生活できるよう、「病気を治す医療」だけでなく、「病気を起こさせない医療」を目指して診療を続けています。
- 心不全の予知として NT-ProBNP または BNP 検査、かつ心臓エコー検査
- 心筋梗塞の予見として冠動脈石灰化スコア検査または冠動脈CT検査を、患者さんのリスクに合わせて専門機関へご相談しています